1分で読めるヒントBlog。栃木県足利の戦略人事コンサルタント事務所 代表の櫻木です。

 

近年、退職代行サービスは増加しており、退職を希望する従業員が利用するケースが増えています。従業員の退職意思を退職代行サービスから伝えられた場合、引き継ぎの時間もないまま退職に至るケースもあり、会社は対応に悩む場合もあるのではないでしょうか。

 

退職代行サービスは、拒否できるのでしょうか?手続きの流れは?

拒否することは、

基本的に従業員の退職を止めることはできません。

 

会社の就業規則で「退職の意思は1カ月前までに告知する」と規定されていても、法律が優先されます。

 

そのため、退職を伝えてから2週間が経過すれば、従業員は退職できます。退職理由は問いません。

手続きの流れは、

以下の通りです。

①:誰についての、どこからの退職代行なのかを確認する

連絡してきた退職代行サービスが、弁護士以外の場合は、個別に対応方法が変わってきますので、会社の顧問弁護士や退職代行に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。

 

 

②:委任状等で従業員の意思を確認する

 次に、従業員が本当に退職代行サービスを依頼したのかどうかを確認するため、委任状等の提示を求めましょう。

正式な依頼内容を示す書類がない場合は、従業員からの依頼に基づくものだという判断ができないため、本人確認のために提出してほしい書類を伝えたり、行ってほしい手続きを伝えたりした上で、「従業員本人の意思であることの裏づけが取れない限りは、退職手続きを進めることはできない」と伝える必要があります。

 

③:回答書を作成する

回答書は、全ての事項がそろわなくてもかまわないので、できるだけ早いタイミングで人事担当者から連絡することをお勧めします。

また、回答書をメールや書面で作成して送付することで、会社が適切に対応しているという客観的な証拠を残すことができます。

本人には「会社と直接対話をする、接触する」ことを避けたいという意図があるはずです。本人に直接連絡を取ることは、退職代行業者に対して依頼内容を確認したものの、なかなか応答が来ない、あるいは依頼内容の確認ができないといったような、やむを得ない事情がある場合にとどめた方がよいでしょう。

 

また、連絡方法は電話ではなく、メールや郵便が望ましいです。

 

電話の場合は、退職代行サービスから本人に対応しなくてもよいと伝えている可能性がある上に、冷静な対応が期待できないケースもあるからです。

退職代行サービスや本人に連絡をする際は、「依頼内容を確認できるまでは、退職手続きを進められない」旨を丁寧に伝えましょう。

 

④:退職代行サービスを利用した従業員の雇用契約を確認する

退職が従業員本人の意思であることが明確になったら、退職代行サービスを利用した従業員の雇用形態を確認しましょう。

無期雇用の場合は、原則として意思表示から2週間で退職ができます。また、有期雇用の場合は、原則として契約期間の満了、あるいは両者の合意によってしか退職できませんので、契約期間の確認も必要です。

 

⑤:退職日を検討する

その後、従業員の希望に加えて、自社の就業規則や雇用契約書、先述した民法に基づき、従業員の雇用契約に応じた退職日を検討します。

企業と従業員の間で合意できる場合は、両者の合意によって定められた日を退職日とします。もし合意できない場合であっても、法律の規定がありますので、正社員は退職の意思表示から最短で2週間、契約社員は契約満了日を退職日とするのが一般的です。

 

⑥:退職日までの扱いを検討する

退職日が決定したら、「退職日までの期間をどのように扱うのか」を検討します。

退職日が2週間後に決まった場合、退職日までの2週間は社員の地位にありますから、仕事をしてもらうことができます。本人が出勤する意向を示した場合には、通常業務や引き継ぎ業務を行うように指示できますが、退職代行サービスを利用するケースでは、これまでと同様に出勤できる状態とは考えにくく、年次有給休暇や欠勤として扱うことが多いようです。

 

⑦:退職事由を検討する

退職代行サービスを利用せざるを得なかったことを考慮すると、会社事情による退職である場合もあります。

未払い賃金やパワハラを理由とする退職の主張がされる場合、企業側も事情を確認し、退職の条件交渉の一環として、これらの問題も解決しておくことが望ましいです。

 

⑧:引き継ぎを依頼する

業務が滞る可能性もあるため、退職前には引き継ぎを依頼しましょう。

退職する従業員が1人で担当していた業務などがある場合、引き継ぎをせずに退職されてしまうと、会社の顧客などに対して迷惑が掛かる可能性もあります。

引き継ぎに関して就業規則への定めがあり、引き継ぎを依頼したのに従業員から何の返答もない場合は、懲戒処分および企業の不利益に応じて損害賠償請求をすることも検討できますが、いずれの主張も認められない可能性が高く、企業にとってデメリットの方が大きいと思われます。

 

⑨:貸与物の返還や私物の返還手続きを行う

パソコンやスマートフォン、執務室の鍵、社員証、名刺など、業務で使用していた貸与物の返却、および会社に私有物がある場合の返却方法などを決めましょう。

考えられる返却方法としては、郵送、本人に会社まで届けてもらう、代理人に会社まで届けてもらう、といったものが考えられますが、レターパックや宅急便を利用して返却するケースが多いようです。


なお、企業側は退職の意思表示を受けたら、速やかに従業員から返却を受けるべき物品のリストを作成し、いつまでに返却するべきなのか期限を定め、送り先を指定し、メールまたは書面で本人や退職代行サービスに伝えましょう。

 

⑩:退職時の誓約書、秘密保持誓約書、

競業避止義務誓約書等や、

各種保険や証明書等の手続きを行う

企業にとって大切な書面は、営業秘密や顧客情報を流出させないための誓約書、秘密保持誓約書、競業避止義務誓約書等です。

ただし、退職時に「これらの書類を作成しなければ退職は認めない」と主張することはできません。

先ほどご紹介した民法の規定では、会社との合意がなくても退職の効果が生じると定めているからです。こういった書類への署名には、退職の意思表示に対してできるだけ円満に手続きを進めつつ、自主的に従業員に応じてもらう必要があります。

また、それ以外にも健康保険、住民税徴収方法についての確認、雇用保険の資格喪失手続き、社会保険の資格喪失手続き、離職票の交付手続きなど、一般的な退職者が出た場合と同様の手続きを踏む必要があります。

なお、企業はこれらの書類を作成することを条件に、上記各種誓約書の作成を要求してはなりません。

今回のヒント

社員が退職の手続きを退職代行サービスに依頼するといった事態を発生させないために、会社はハラスメント等のない風通しの良い職場環境を作ること、そして日頃から自己都合退職ルールについての正しい知識を社員に教育しておくこと

ぜひ、検討してみて下さい。

戦略人事コンサルタント 櫻木